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含水鉱物班

研究目的

水は太陽系惑星の中で地球を特徴づける物質であり、水と鉱物の相互作用の理解こそが地球物質科学の根本的課題の一つである。近年のプルームテクトニクスによる地球のダイナミックな描像は、地球表層と深部が物質科学的に密接にリンクしたシステムであることを強く認識させた。特に水の挙動は、地球を理解する上での最重要課題である。本領域で立ち上げる高温高圧中性子散乱ビームラインは、鉱物中の水を直接見ることができる待望の物質科学的ツールである。含水鉱物班では、地球表層の水が鉱物中にどのような形で固定され、水素結合をはじめとする化学結合の形態が、地球深部に鉱物が取り込まれるにつれてどのように変化していくのかを物質科学的に明らかにすること、また、水素は結晶中であっても高温下では非常に高い移動度が予想されることから、鉱物中に取り込まれた水素が地球深部の高温高圧下でどのようなダイナミカルな挙動を示すのかを原子レベルで明らかにすることを研究目的とする。

研究計画

含水鉱物班では、地球表層の水が鉱物中にどのような形で固定され、地球深部に取り込まれる際、水素結合をはじめとする化学結合の形態がどのように変化していくのかを物質科学的に明らかにする。また、水素は結晶中であっても移動度が非常に高いことから、鉱物中に取り込まれた水素が地球内部の高温高圧下でどのようなダイナミカルな挙動(結合、切断、拡散、組織化)を示すのかを原子レベルで明らかにする。そのために、以下のような諸問題に取り組む。

地殻における主要な含水鉱物中での水素固定形態の結晶化学

緑簾石族鉱物,パンペリー石族鉱物,およびそれらの類縁鉱物(マックファライト,サーサス石など)中の水素位置,および水素結合と陽イオンの置換関係を解明することにより、地殻における鉱物中への水の固定機構を明らかにする。

上部マントルにおける主要な含水鉱物中での水素固定形態の結晶化学

chondrodite, phase A, superhydrous phase Bを中心とした含水鉱物の水素位置と占有率を決定することにより、の結果との比較から、上部マントルで安定な含水鉱物の水素結合の特異性、地殻での水素の固定機構との相違点を明らかにする。

含水鉱物中の水素結合の温度圧力上昇に伴う変化の解明

前述 で対象にした含水鉱物を対象に、温度圧力の上昇に伴う水素結合の幾何学(結合距離、結合角、占有率)の変化を解明し、地球深部での含水鉱物の安定性に水素結合がどのように寄与しているかを明らかにする。

含水鉱物中の水素の熱振動解析による高温高圧下での水素のダイナミックな挙動の解明

Mg(OH)2, Ca(OH)2など比較的構造がシンプルな含水鉱物をターゲットに、高圧下で1000℃近くの高温までの水素の熱振動解析から、地球深部での水素のダイナミクスを明らかにする。


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