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領域概要

本研究領域は、地球内部の諸現象において大きな役割を果たすにも関わらずまだその物質科学的実態がほとんど解明されていない、水を含む地球深部物質の高温高圧下の研究を、中性子を使って飛躍的に発展させるために計画された。そのためにまず、日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が茨城県東海村に建設し2008年にその運転が開始された、世界最高強度のパルス中性子源であるJ-PARC物質・生命科学実験施設内に、高温高圧下での中性子散乱実験に特化したビームラインと大型高温高圧実験装置を開発・建設する。それを用いて含水鉱物やマグマなど水を含んだ地球深部物質の物質科学的研究の新たな展開をはかり、地球深部の水に関連する理解を大きく進展させるとともに、将来的に広く物質科学全体の発展にも貢献しようとするのが領域設定の目的である。

研究戦略

本研究領域は、地球深部物質中に固定された水、マグマに含まれる水の正体に、世界的にも先駆的でかつ挑戦的な実験となる高温高圧下の中性子回折実験を通じて物質構造科学的に迫ろうとするものである。その目的達成に、高温高圧中性子散乱ビームラインの建設、そのビームラインと実験手法を共通基盤とする水を含む地球深部物質の高温高圧下の実験的研究、近年進展が目覚ましい量子シミュレーションによる水・マグマ・含水鉱物について構造・動的性質・反応性の研究という3本の柱を立て挑む。この3本の柱は緊密な情報交換と研究方針・スケジュール調整が必要で、高度に機能化された風通しの良い組織化が必須条件である。そこで本研究領域ではそれぞれの柱に対応し、総括班X00、研究項目A01(実験班:計画研究1〜3)、研究項目A02(計算班:計画研究4)を設定する。

研究内容、研究項目間・計画研究間の関係

総括班X00

新学術領域研究において、領域全体の研究方針策定や企画調整の役割と、領域内での共通設備基盤整備の役割の両方を持つことになった。しかし本領域研究では、共通研究基盤となる高圧中性子ビームライン建設にかかる仕事がきわめて大きなウエイトを占めるので、両者を一つの組織で運営することは効率が悪い。そこで両者の役割分担を明確にするために、領域代表者の下、総括班メンバーをマネジメント担当と研究支援担当の二つに分け、前者は領域全体の研究戦略の構築、研究項目間のスケジュール調整や情報交換のサポート、および領域の広報活動や研究集会の企画・実行などを行い、後者はJ-PARCに建設する高温高圧中性子散乱ビームラインの設計・開発・建設・維持を担当し、それぞれの任務に専従する体制をとる。

研究項目A01(実験班:計画研究1〜3)

主に本研究領域で建設する高温高圧中性子散乱ビームラインを共通基盤とし実験的手法で研究を推進する。本研究領域が目指す水惑星地球内部の物質科学的理解の鍵は、水の鉱物への固定機構とそのダイナミカルな挙動、および含水マグマの構造と物性の理解である。そこで、計画研究として前者をターゲットとする計画研究1(略称:含水鉱物班)、後者をターゲットとする計画研究2(略称:マグマ班)を構成する。しかし、マグマ班のターゲットであるマグマは液体であるが、高温高圧下での液体構造や物性は、基礎物理分野でもファイナルフロンティアとして未解決の問題も多い。そこで化学的単純系液体の高温高圧下での構造と物性の解明を目指すとともに、液体構造解析手法の確立などマグマ班の物理的バックグラウンドをサポートする計画研究3(略称:液体班)を構成し、マグマ班と強力なタッグを組んで研究を推進する。

研究項目A02(計算班:計画研究4)

近年進展が著しい最先端の量子シミュレーションを用いて、広い温度・圧力範囲の水・マグマ・含水鉱物について構造、動的性質、反応性などの基礎物性を予測する。さらに、研究項目A01(実験班)と密接に情報交換を行い、実験的に着目するべき系や温度・圧力などの提案や実験で得られた中性子データから導き出される含水鉱物・マグマの構造物性や動的性質の物理的解釈についての研究を推進する。


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