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計算班

研究目的

水素は次世代エネルギーとして注目されているのみならず、地球形成史に大きく関わってきた重要元素である。原始地球の形成過程においては、地球の表面が高温の溶融状態(マグマオーシャン)になり大量の水(水素)を貯蔵し水圏の形成に大きな役割を果たした可能性がある。現在の地球においては、水素は水(H2O)や含水鉱物(OH基)などの化合物、あるいは無水鉱物やマグマに侵入した不純物として存在する。水(水素)の存在は鉱物やマグマの構造や融点・粘性・反応性などの物性に大きな影響を与えるので、そのメカニズムの原子レベルでの理解は地球形成史、地球深部ダイナミクスや火山噴火の解明に本質的な役割を果たす。

本計画研究では、最先端の量子シミュレーションを駆使することにより、地表環境から高温高圧領域までの鉱物、マグマ、水の構造と物性に対する水素や水素結合の影響を明らかにすることを研究目的とする。本計画研究の成果は、実験結果の予測による実験の効率化および実験結果の理論的理解の両面で本領域実験各班の遂行にも大きく貢献すると期待される。

本計画研究のメンバーは、基盤研究(B)(一般)(H19-H22)「ホスト=ゲスト型機能性ナノ材料の設計・解析・制御」などにより、定温定圧第一原理分子動力学法、第一原理線形応答理論、第一原理経路積分分子動力学法、オーダーN第一原理分子動力学法、オーダーN tight binding 分子動力学法、遺伝アルゴリズムによる第一原理結晶構造予測法など、本研究に必要な最先端の量子シミュレーション手法の実行環境を既に開発し利用して、鉱物・高圧・材料などの物質科学分野で目覚しい成果を上げている。我々は、中性子散乱を用いる実験家と連携して水素含有地球物質の量子シミュレーションを強力に推進することにより、地球を探る計算物質科学・地球に学ぶ計算物質科学の分野を切り開いていきたいと熱望している。

研究計画

これまで本計画研究のメンバーが開発してきた最先端の量子シミュレーション手法を展開し、高温高圧力下での鉱物、マグマ、水の構造と物性の変化の解明を目指した計算物質科学を強力に推進する。

特に平成20年度には本計画の計算を実行するPCクラスターを導入し、各種量子シミュレーションプログラムをインストール・調整し、5年間に渡る計画研究のための基盤を立ち上げる。

平成20年度から平成22年度にかけての高温高圧中性子散乱ビームラインが稼動するまでの期間には、上記PCクラスターを駆使し、本研究領域のターゲットである鉱物、マグマ、水などに関する量子シミュレーションによる研究を積極的に行なう。ここで得られる研究成果は、本領域研究の実験班の重要な研究指針にもなることが期待できる。具体的には、 高圧安定含水相探索、水素位置の精密決定、物性予測  高圧下でのマグマの構造、溶融関係、物性の予測  高圧下の水の液体構造と物性の解明についての研究 を行う。さらに上記3研究に加え、次世代アンビルの素材として期待される多結晶ナノダイアモンドの塑性変形機構等の解明にも研究を発展させる。

平成23年度と平成24年度には高温高圧中性子散乱ビームラインが稼動する計画なので、それまでに得られた研究の成果を実験班と共有するとともに、これと並行して実験班の研究成果を本計画研究にフィードバックすることにより、上記研究のさらなる展開を図る。


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