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マグマ班

研究目的

水は地球の重要な揮発性成分の1つであり,その存在はマグマ生成に多大な影響を及ぼす。マグマ班では,水とケイ酸塩や鉄の系を対象とし,水を含んだマグマの構造と物性を理解することを通じて地球内部の活動を理解することを主な目的とする。

現在までに我々マグマ班のメンバーは,地球内部でのマグマの生成,含水高圧相の生成,マグマと結晶との元素分配,高圧相転移境界における水の影響,及び放射光X線による含水マグマの構造などを研究してきている。しかし,マグマの構造と物性をより詳しく理解するためには,水素原子を直接には検出できない従来の方法では不十分である。今回の新学術領域研究で導入される高温高圧発生装置を用いた中性子散乱実験を行えば,これまでX線等では検出が不可能であった水素の高温高圧下での挙動を見ることができる。また,X線散乱に比べ,中性子散乱では高波数の散乱データが測定可能であることもマグマの構造解明の研究にとって優れている。我々マグマ班の目的は,水(水素)やマグマを見るのに最も適したプローブである中性子を使って高圧下でのマグマの物性や構造,及びその水の影響を解明し,新しい高圧中性子マグマ科学を築くことである。

研究計画

マグマ班ではJ-PARCの中性子を利用しマグマ及び熔融鉄の高温高圧下でのその場観察を行うことによって構造の圧力や組成による変化を解明し、さらに各種の物性変化と対応させることにより、マグマや熔融鉄が地球深部進化に果たした役割を解明する。そして特にマグマの物性や構造における水や水素の影響の解明を推進し、高温高圧下での中性子マグマ科学を樹立する。

マグマの構造

水を含んだ系のマグマの構造を明らかにする。従来、マントル物質に水が加わればSiO2に富んだマグマが生成されると考えられており、この現象は久城らにより、水が珪酸塩メルトの網目構造を切ることが原因であると考えられてきた。しかし、我々の研究はこの現象は各圧力下で普遍的ではなく、5 GPa以上の高圧下では逆にマグマはMgOに富む方向に変化することを見出した。マグマ班では特に含水マグマの組成変化が急激に起こる3‐10 GPaの範囲内で高温高圧中性子その場観察実験を行う。

マグマの物性

粘性及び密度は地球内部におけるマグマの移動を支配する重要な物性値である。本研究では中性子CCDカメラを用いた落球法により、高温高圧下でのこれらの物性値を明らかにする。2種類以上の球体を使用すれば、原理的には密度、粘性を同時に決めることが可能である。

マグマの状態観察

3‐5 GPa付近でフルイドとマグマが不混和から混和へと超臨界状態になることが予想されており、その付近のフルイド(含水量50 wt%程度のもの)の状態観察をCCDカメラを用いて行うとともに、中性子回折により、そのフルイドの構造及び性質を明らかにする。特に第2臨界点付近でフルイドとメルトがどの様に構造変化して両者の区別が付かない1相になっていくのかを連続的に詳しく調べる。


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